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唐辛子の蘊蓄・・

 山形の山々も赤や黄色に染まり、晩秋の色模様です。夏は暑かったし、冬も厳しいかなぁと思うこの頃です。
 厳しかった夏は、唐辛子の青いヤツを良く食べました。油で炒めて醤油をチョットかけて頂きます。コイツは辛いかな・・と思って食べると夏の暑いときなどは、心身ともに?食がすすみます。

 唐辛子の原産地は中南米で、かのコロンブスがトマトやジャガイモ・タバコ等と共にスペインに持ち帰ったと言うのが定説だそうで、ヨーロッパでは、スパイスは黄金だった時代の話です。そう、バスコダ・ガマやマゼランがスパイスを求めて大海原に乗り出した大航海時代の幕開けの頃。
 唐辛子は、ナス科の植物で種子が丈夫で、栽培のための土地を選ばず、極寒地でない限りは栽培が可能だったのが、急速に伝播した要因とか。日本へは鉄砲伝来(1542年)の前年にポルトガル人が長崎に伝えたと言う説があり、その説によればおもしろい事に唐辛子は、その後九州から本州へはストレートに伝わらず、朝鮮半島に伝播したそうです。
 当時の九州は文化圏的には、本州より朝鮮半島の方がむしろ近かったという事でしょうか。で、なんと朝鮮半島では当時、唐辛子の事を日本から来たということで、『倭辛子(ワガラシ)』と呼んでいたそうです。
 その後、豊臣秀吉が朝鮮出兵の時に連れ帰った、朝鮮の陶工が愛知県の瀬戸に移り住み陶器作りをしていたのですが、その集落を唐人村と呼んでいて、そこで栽培されたカラシのように辛い食べ物ということで、『唐辛子』と呼ばれるようになったとか。

 唐辛子の辛みの成分は、『カプサイシン』と呼ばれて果皮にふくまれ、コショウの辛みの成分である『ピペリン』のナント100倍もの辛さを持っているそうです。スパイスとしての唐辛子は、小量で効果的な辛さを得られる事・油成分の含有量が少なく香りがほとんど無いため、他のものの香りを損なう事無く辛みを得られる事・熱を加えても辛みは変化しない事等から、使い勝手のよさがありこれも世界中に広がった一因となっているそうです。
 人は「味」を舌の『味蕾』の痛覚で感じるものだそうですが、辛みをタイプ分けをするならば、口の中がカーッと熱くなる「ホット」と、鼻にツーンと抜けるような「シャープ」の2つに分類されるそうで、前者の代表は唐辛子。後者にはカラシ・ワサビ等があるようです。

 一般に辛さの刺激は、接触した面の血行を良くすると言う物理的作用があるので、しもやけ防止のために靴先に唐辛子を入れたり、食物として摂取すれば、口の中や消化器の粘膜を刺激して食欲増進という効果をもたらします。また、辛いものを食べると、交感神経系の興奮が起こって、約10分で皮膚表面の温度上昇が起こり、皮膚表面の血流が増大することによって汗腺の活動が高まるのだそうです。要するに血行が良くなって体温が上昇すると汗腺が開いて汗をかく。そうすると皮膚温度が落ちてその時の温度差で涼しさを感じるのだそうで、この作用が、熱い国で辛いもの(料理)が発達した理由の一つなのだそうです。
 それと同時に細胞の代謝も活性化させ、辛いものを食べた後の代謝量の変化を比べると、同じカロリーを摂取していても、辛いものを食べた方が、25%ほど代謝量が増大するのだそうです。代謝のためにはカロリーを必要とするわけだから、辛いものを効果的に取り入れて、食べながら痩せようとする(究極の方法だなぁ)、サーモダイエットなる研究が筑波大学などで進められているそうですョ。

 唐辛子の辛み度の大小で、前述の皮膚表面温度の温度差は変化するそうで、辛ければ辛いほど食べた後の皮膚表面温度は高くなり、その後の放熱と発汗による皮膚温度の冷却効果は高くなって、その温度差は大きくなるので、熱帯地方の超辛〜い料理はこの温度差を期待するわけですね。逆に気温の低い地方の比較的辛くない料理の場合は、食後の皮膚表面温度はなだらかに下がり、しかもその場合は、摂取前の皮膚表面温度より下がる事はないそうで、この場合は辛みのスパイスを使うことによってホカホカ感を得られることになりますね。でも、唐辛子自体も熱い地方に行くほどに辛くなるそうで、一説によると同じ唐辛子の場合、日照時間と水はけによって辛みは比例的に違うのではないかと言われているそうです。暑くて日照時間の長い所の唐辛子ほど辛くなる。熱帯・亜熱帯地域で唐辛子を含む辛みの食文化が発達しているのは、当然の帰結といえるのかもしれませんね。

 唐辛子は、栄養学的に見てもβーカロチンやビタミンCを大量に含んだすばらしい食べ物だそうで、β−カロチンはプロビタミンA(ビタミンAの前駆物質)で、小腸上皮で吸収された後、レチナールを経てビタミンA(レチノール)に転換されます。
 ビタミンAは、脂溶性ビタミンの一種で、視覚サイクルや生殖機能、成長、皮膚・粘膜上皮の分化、骨の形成等に不可欠なもので、近年は、発ガン予防や癌細胞の増殖抑制・免疫能の活性化と言う側面からビタミンA化合物が注目されていることは、すっかり有名な話ですね。

 さて、辛い唐辛子に幾らビタミンCやβ−カロチンが含まれていても、あんな辛いものどうやっていっぱい食べるの?と、心配なさっているあなた!ハンガリーの特産品である、「パプリカ」。あれは辛くない唐辛子で、あのパプリカには生のピーマンの74倍のβ−カロチンが含まれているそうで、ピーマン100g分のカロチンを小匙3分の2の量で摂取できるそうです。パプリカ自体は辛みも味もなく、色を付ける為のスパイスですから、オムレツやハンバーグに入れたりマヨネーズに入れたりすれば、ピーマン等の緑黄野菜が嫌いな子供でも、これだったら必要なカロチンは摂取出来かもしれませんね。