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今年期待の星!?

●それは偶然からはじまった!

 今年の春に大きな話題となった百武彗星に続いて、ヘール・ボップ(Hale-Bopp)彗星という大彗星が地球に接近してきています。

  1995年7月23日。アメリカ・ニューメキシコ州のアマチュア天文家アラン・ヘールさんは、いて座に10.5等の彗星を発見しました。ヘールさんは、これまでにも長い間新彗星をさがし続けていた人です。ところが今回の発見は、すでに発見されている彗星を観測中、休憩をかねて、いて座付近の星空をながめていたとき、M70という天体のそばに偶然見つけました。

 そのころ同じアメリカのアリゾナ州でトーマス・ボップさんが、やはりM70を観察中に、同じ彗星を発見しました。ボップさんもアマチュア天文家で、日ごろよく望遠鏡で星空をながめてはいましたが、彗星をさがしていたわけではなかったようです。彼らの発見は国際天文連合に報告され、『ヘール・ボップ彗星』と名付けられました。学問上の正式な名前としては、C/1995O1 という番号がつけらています。(「ヘール・ボップ彗星」では長いのでHB彗星と呼ばれることもあります。)

 ところが、その後驚くべき事実が明らかになりました。ヘールさんとボップさんが発見したとき、ヘール・ボップ彗星は太陽からの距離は約7天文単位およそ10億kmという遠い距離(天文単位は地球と太陽の平均距離を1とした距離)で地球からも約6天文単位と遠い距離にありながら 10.5等級(光度=等級というのは、天体の明るさを表す単位で、1等級違うと明るさが2.5倍になります。数字が小さいほど明るくなることに注意してください)という明るさでした。

 彗星は太陽に近づくほど活発になり明るくなる天体です。しかし太陽からこれほど遠い距離でこんなに明るく見えていた彗星はこれまで例がありません。例えば、大彗星として名高いハレー彗星でさえ、この距離ではおよそ15等。ヘールボップ彗星の100分の1の明るさしかなかったのです。これは、かつて観測されたことのない大彗星ではないか、とたちまち世界中の天文学者の注目の的になりました。


●ヘールボップ彗星は本当に明るくなるのか?

 では、ヘール・ボップ彗星はいったいどれくらいの明るさになるのでしょうか?長い尾を引く大彗星になるのでしょうか?

 彗星は、太陽の光や熱によってその本体である核の氷が蒸発し、光を放つ天体です。ということは、彗星は太陽に近づくほどたくさんの物質を放出し、明るくなると考えて良いでしょう。つまりその時の彗星と太陽の距離、彗星と地球の距離がわかれば、おおざっぱにどれくらいの明るさになるかは予想をすることができるわけです。

 太陽に最も近づく(近日点通過)のは、4月1日です。

 3月半ば過ぎに明け方の空から夕方の空に移動し、この頃1等くらいまで明るくなると予報されてます。巨大な彗星と期待されてる割に、先日の百武彗星程度の明るさ程度しか期待されていない理由は、近づいていると言っても太陽からの距離は1天文単位弱と比較的遠く、またその頃は地球からも1.3天文単位程と、かなり離れていることによります(遠くにある車のヘッドライトは、手元の懐中電灯より暗く見えるのと同じですね。百武彗星が最もよく見られた頃は、地球に0.1天文単位まで近づいたのです)

 実は彗星がどのように見えるかを予想することは現代の天文学でも非常に難しいことです。

 それは、彗星の正体がよくわかっていないことに加えて、彗星ごとにその大きさや、活発さに開きがあるからです。さらに観察する場所の空の状態(どれくらい暗い星まで見えるか)によっても、その見え方が大きく違ってしまいます。過去にも大彗星になると言われながらも期待を裏切った彗星はたくさんあります。天文学者でさえ『彗星ほど気まぐれな天体はない』という人がいるほどなのです。

 いずれにしても、過去20年くらいの間で考えれば、百武彗星と同様、最も期待できる彗星の1つであることは間違いありません。また長期間観測が可能なので、ゆっくりとその姿を堪能したいものですね。