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田圃にカブトエビを見る

「カブトエビ」姿田圃にカブトエビを見る
☆ 生きている化石−−−−−カブトエビ

 田植えがすんで、10日ほどたった田圃に長さ2〜3cmほどのオタマジャクシによく似た黒褐色の動物が水田の底を這い回ったり、水田を仰向けに泳いでいたりするのが見られることがあります。

 多くの人は、これをオタマジャクシであろうと見過ごしてしまうことが多いようですが、実はこれがカブトエビです。その姿は、三葉虫を思わせるもので、体長2〜3cm、楕円形で後部に切れ込みのある背甲で体を覆っていて、体の後部は多くの節からなり、エビに似ています。尾の部分には一対の長い(2cm位)のむち状の突起を持っています。

「カブトエビ」大きさ  カブトエビ類は、甲殻類のうちで下等な鰓脚類に属し、背中に一枚のたて状の背甲を持つので背甲目の名で呼ばれ、二億年前の中生代三畳紀のヨーロッパの地層からは、現在ヨーロッパにいるヨーロッパカブトエビと寸分違わぬものが見つかっており、同一種と同定されているそうです。三畳紀と言えば、恐竜がまだ本当に進化する以前の頃でまさに、「生きている化石」です。現在地球上に棲んでいるのは、一科二属九種と言われているようです。

 日本には、アジアカブトエビ・アメリカカブトエビ・ヨーロッパカブトエビの三種類が分布し、特にヨーロッパカブトエビの分布については、山形県だけで報告されているようで、昭和23年に山形県酒田市で初めて発見されました。酒田市のその発見場所は県の天然記念物に指定されています。(その場所のヨーロッパカブトエビは、天然記念物と言う意味だそうです)

 長井市内では、未確認でしたが1995年、長井市河合に住む当時小学校の4年と3年の清宗くんと寿くんという兄弟が自宅近くの水田を泳いでいるのを見つけ、県立博物館で調査したところカブトエビであるという「お墨付き」をもらったという報告があります。おそらくは、山県だけに分布すると言われているヨーロッパカブトエビであろう(未同定なのだそうですが)とのことで、長井市の隣、南陽市では1978年に、また川西町では1982年に確認されています。

☆ 水田の草取り「虫」

 カブトエビは水田の中で、四十数対の肢(あし)を絶えず動かしながら、泥をかき分けては穴を掘って体を埋めたり、、泥の上を這うように前進しているので、それが人の田の草取りをしている姿によく似ているところから「田の草取り虫」と呼ばれることもあります。実際仕草だけでなく、水田の中の芽が出たばかりの雑草を引き抜いて雑草防除の効果が有るとの報告も数多くあり、近年無農薬・無公害の農業に一般の関心が高まるとともに、カブトエビの発生とそれを利用する農家のメディア登場の機会が増加しているようです。

 カブトエビが除草に対してどのような効果があるのか?と言う研究が農林省農業技術研究所、神奈川県農業総合研究所、大阪府農林技術センターなどで行われたようですが、カブトエビが発生している水田に農薬を全く使用せず、田植え後40日目にその水田の雑草を手取りで除草したところ、所用労力は10アールあたり2時間で、これはまこと少ない労力といえるそうです。
 ちなみに、除草剤使用以前の全国統計によれば手取り除草10アールあたり50時間で、除草剤を使用した場合は、除草に要する時間はほとんどないわけですが、除草剤散布に要する労力は、10アールあたり、9時間ほど必要なのだそうです。

 また、水田1平方メートル区で30〜40匹のカブトエビがいれば、比較的高い除草効果が認められたという報告もあるようです。