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「芳一君の酒屋奉公日記 V」

洗米作業

 正月明けの4日から、吟醸酒の麹米の洗米が始まった。
 「山田錦」の40%に精白した米だ。吸水歩合を見るためステンレスのザルに10Kgずつ計る。
 ストップウォッチで20秒づつ3回。2人一組で強すぎないように手で気をつけながら洗米する。終わったらすぐに30秒のかけ水をする。そして、浸せきする9〜12、3分の限定吸水をする。気温や水温、米の状態等によって条件が変わってくるので、それがなかなか丁度良くゆかない。吟醸仕込みがなれた頃終わる。
 吟醸の洗米は特殊だが、ふつう仕込みの洗米は機械でする。多いときで900kgもの米を洗米するには手ではちょっとつらい。
 精米屋が洗米まですることになっているようだ。昔は「米とぎ唄」などをうたいながら人手でやっていたのだろうが・・・。

 朝の仕事

 酒造りはそれぞれ担当がある、精米屋、釜屋、麹屋、もと屋などその分野の仕事がまかされている。そのすべてを統括しているのが「杜氏」だ。そして、それぞれが協力する仕事と担当の仕事とがからみあいながら酒造りがすすむ。
 酒造りの仕事は、6時から始まる。
 今の時期の6時というとまだ暗い。
 まずは、麹と水をタンクに入れ「水麹」を造る。
そして、麹屋はムロへ行く。おれ達は米張り(大釜にこめをいれる)作業。今は我が会社でも電動のチェンブロックを使っているが、ちょっと前まで数百キロの米を桶ですくっていた。けっこうハードな仕事だった、おかげで今はずいぶんらくになった。・・・・しかし、体を使わない分腹が出てきた。・・マズイ。
朝8時半頃に仕込みが始められるように準備するのが朝の仕事だ。  段取りが済めば、朝食をとってみんなが来るまで一休みする。
まきで釜をわかしてたころはお湯になるまで時間がかかったから、それこそ3時頃から仕事が始まったそうだ。

吟醸仕込み

正月明けに造った酒母で、いよいよ18日から吟醸の仕込みが始まった。
寒中のいちばん寒い時期に仕込むのだそうだ。吟醸は麹もほかのとは別に仕立て、洗米も放冷も一切機械は使わない。
 手は冷たいし気は使うし大変な作業なのです。
 そんなことが約1週間つづく。

 三段仕込み

 仕込みは、初添、中添、留添と3回に分けて仕込むだから3段仕込みと言うんだって。
 最初、初添の水を前日にタンクに入れて置きつぎの朝麹を入れ水と混ぜる。それに初添分の蒸米を仕込む。次の日は、踊りといって一日ねかし酵母の活動を活発にさせる。三日目に中仕込み、これは初添の倍以上の量の米を使う。そして、四日目に留仕込みとなる、ここでは約600Kgの米を仕込み、一本のタンクに全部で1500kgもの米が投入される。大手ではこの倍の3トン仕込みをしているそうだ
 ここでは二日に1回留仕込みとなる(半じまい)大きなところでは毎日留仕込みになる(日じまい)をしているそうだ。四日分の仕事が毎日並行して繰り返されるわけだ、そんな毎朝の仕事をするのです。(けっして、酒飲みの仕事に行ってるわけではありません。)また、しぼりになるとき甘みを出すために2度ふかしをして米を柔らかくしてもう一度4段目を入れる場合もある。ここがまた、酒の(押し)になるんだって・・・・。