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「芳一君の酒屋奉公日記 X」

「精米屋さん」

 今、NHK朝ドラは「甘辛しゃん」。造り酒屋が舞台になっている。
 私も、冬場は造り酒屋に勤めて酒造りの仕事に関わっている。
 私の勤める造り酒屋は、「東洋酒造株式会社」という。
 会社とは言いながら、造りに入る蔵人は杜氏さんもふくめて5人だ。
 大きな酒屋では蔵人は10人から20人位いるそうだから、規模的にはそれほど大きい方ではない。
仕込みで手がかかる時は、営業の人や事務所の人にも応援を頼んで総動員だ。
昔は、蔵人は造りに入れば泊まり込みで、親が死んでも帰れない。なんてことだったらしいけど、最近はそんな事じゃ勤める人がいなくなっちゃうんで、普通の会社並に8時から5時まで勤務でやるところが多くなっているそうだ。
 私は通いで去年までは朝6時から仕事をしていたが、今年から8時からの勤務になった。この会社に来て今年で12年目の冬になる。

 東洋酒造はわが家から歩いて約8分位の所だ。

 農作業が終わり一息つく間もなく去年の11月から酒造りの仕事に入った。
 私の主たる担当は精米。酒造りの最初の工程だ。
 精米してすぐの米は使えないので10日程冷ます必要がある・・・・。そのため、11月中旬から精米作業は始まっている。
 今年も「さわのはな」が入ってきた。年々確保が難しくなっている。
 今年は、米沢市、高畠町、舟形町、新庄市、尾花沢、平田町、村山市等県内各地から集めている感じだ。
 我が杜氏さんのこだわり?で自家精米する米は「さわのはな」だ。
 小さな酒屋といっても米は1200俵程使う。その内半分位を自家精米する。
 最近では、手のかかる精米を自分の所でする酒屋はめずらしくなってきている。
 長井市近辺の酒屋さんでは、ほとんど大きな精米工場に委託しているそうだ。
 (酒米は、外硬内軟で芯白の米が良いといわれている。まあ、今はそんな最高の米を常時確保する事はなかなか難しいようだ。)

 入ってきた玄米は、70%まで減らされる。純米酒や本醸造酒に使用されるものは60%まで、吟醸酒や大吟醸に至っては、50〜40%まで磨く、中には35%位まで磨いているメーカーもある。
 つまり、玄米が10俵あったら3俵は米糠として捨てる。高級酒といわれる大吟醸なんかは、半分以上捨ててしまうのである。
(普通の食用の白米は、約1割くらいしか減ってないから「酒というのはほんとに贅沢なもんだなあ」と思う。
なにせ、古い機械を駆使しての精米作業なのでなかなか大変なところもある。

 精米をはじめて米が熱をもちはじめる頃に、機械に抵抗がかかる。また白度が高くなってちょうどでき上がる頃や、その都度ときどき急に抵抗が強くなる時がある。
 それが大丈夫だろうと思って休憩時間で、みんなと一緒にお茶なんかしてる時に限ってトラブルを起こす。休憩が終わって行ってみると機械が止まって米が山になっていたりした事もあった。
 大吟醸は40%の「山田錦」を使っているが、そこまでいくと、残念ながら会社の古い精米機では無理だ、専用の精米工場で精白してもらって仕込む。
 そんな事で、約半年は粉まみれになって働いている。