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ヤポネシア・ギッタレ国のたそがれ

			大手をふるった 日の出る国も
			西の空に 傾きかけた
			不良債券 金融不安
			バブルのつけが 重くのしかかる
    			   (『ヤポネシア・ギッタレ国2002』)

 「地に堕ちた」という言葉しか思い浮かばない。この国も、この国の企業も地に堕ちた。倫理とか、責任とかはは遥か遠くに霞み、その場しのぎの取り繕いのみが横行する情けない姿を世にさらしている。

 例えば、今マスコミを賑わしている日本ハムの輸入牛肉混入問題。ここには、倫理のかけらも、責任のかけらも見当たらない。同様に牛肉の偽装を行った雪印食品が社会的な糾弾を受け、企業の存続を断念せざるをえない事態に陥ったのを見ていながら、更に悪質な偽装と、隠蔽を行っていたことは、この会社に倫理というものが存在しないということを裏付けている。

 そして責任。この問題に関して発表された処分で、最も厳しい懲戒解雇の処分を受けたのは、子会社日本フードの姫路、徳島、愛媛の営業部長3名、あからさまに現場に責任を負わせた形だ。しかし、30年近いサラリーマン経験から言わせてもらえば、現場は上からの指示があったり、あるいは行為に対する了解を取り付けない限りはまずは動かないものだ。功名のために勝手なことをするなどということはあり得ない。お家のために詰め腹を切らされた3人の営業部長(私と同じくらいの年だろうかな)に同情を禁じ得ない。

 これからこの会社も雪印同様、社会的な制裁を受けるだろう。業績が落ち、先行きが危うくなれば、採算性の悪い工場や営業所が閉鎖され、お定まりのリストラが始まる。この会社を愛し、ここで働いていることを誇りに思っていた人たちが、また犠牲になるのだ。

			昔の友に ばったり会ったら
			「これだよ」と言って 首に手を当てた
			仕事一途の 真面目なやつが
			お払い箱とは 世間は冷たい
				つらい時代に なっちまったな
				どこでどうして 間違ったのかな
				豊かさ求めて 真面目に働き
				真っすぐ生きて 来たはずなのに
						(『つらい時代』)

責任といえば、雪印や日本ハムの問題の発端となったBSE(牛海綿状脳症)については、未だ誰も責任をとってない。原因となった肉骨粉の使用を許可し、奨励した役所がある。指導した技術者がいる。農家に買わせたところがある。EUからBSE発生のリスクが高いことを指摘されたにもかかわらず、それを門前払いした役所がある。この戦犯たちの誰もが責任をとっていない。この延長線上に雪印や日本ハムの問題がある。日本ハムの問題では武部農水相がえらく元気だが、人の責任をとやかく言う前に、己が率先垂範すべきだろう。

			腹を切るような サムライは消え
			首切りばかりが 巷に流行る
			働く者だけに 痛みを押し付け
			おのれの責任は 頬かぶりか

大物が消えた。政治の世界からも、官僚の世界からも、経営の世界からも。残った小物たちは責任を転嫁しながら、己の保身のみに汲々とする。

 小学館の「現代の世相」シリーズの1冊『会社の民俗』(佐高信編)の中で、山田智彦氏がダメ経営者の姿を次のように活写している。これは経営者に限らず、政治家も官僚も同じだろう。

 性格が頑で身勝手な思い込みが強い。したがって、我(エゴイズム)を通す。勉強不足で、数字に弱い。自分より勉強している部下の意見を聞かない。猜疑心も強く、自分の存在を危うくする部下がいれば、ためらわずこれを蹴落とす。

 未来への見通しができず、企画力がなく、決断力、実行力に欠ける。合議制を取ってみたり、独断専行したり、その場しのぎに終始し、きちんとした基準、即ち明確な考え方を持ってない。

 これを読んで、「あの人のことだ !」と思い当たるリーダーを戴いている人は不幸である。リーダーの失敗が、いずれ我が身に降りかかってくることは間違いない。そして、もしもこの国のリーダーの誰も彼もがこのような人物だったとしたら、たそがれ時のこの国は、やがてとっぷりと日が暮れ、深い闇に包まれることだろう。